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特集 ALI/ARDSの病態と治療
ALI/ARDSの病態における活性化好中球の関与
Roles of Activated Neutrophils in the Pathogenesis of ALI/ARDS
田坂 定智
1
Sadatomo Tasaka
1
1慶應義塾大学医学部呼吸器内科
1Division of Pulmonary Medicine, Keio University School of Medicine
pp.615-621
発行日 2007年6月15日
Published Date 2007/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404100812
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はじめに
急性肺損傷(acute lung injury;ALI)や急性呼吸促迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)は敗血症,重症肺炎,外傷などの種々の基礎病態に引き続いて惹起され,肺微小血管の広範な傷害による透過性亢進型の肺水腫像を呈する病態である1).過去の臨床的,実験的検討から,①ARDS患者の肺組織や気管支肺胞洗浄(bronchoalveolar lavage;BAL)液中には好中球が増加していること,②好中球減少状態の患者では好中球数の回復とともにARDSが増悪すること,③好中球数を減少させた動物モデルではARDSの発生が抑制されること,④活性化した好中球を動物に注射するとARDS様の病態が生じること,などが明らかになっている.一方,好中球が減少した患者でもARDSを発症することから,ARDSの発症に好中球は中心的な役割を果たすものの,必須ではないと考えられる1).ALI/ARDSにおいては,肺内に過剰に集積し,活性化した好中球から蛋白融解酵素(プロテアーゼ)や活性酸素などの組織傷害性物質が放出され,肺胞上皮細胞,血管内皮細胞,細胞外基質を傷害する1).その結果,血管透過性が亢進して肺胞腔が高蛋白の水腫液で満たされ,ガス交換が障害され,急性呼吸不全に陥るものと考えられる1).
本稿ではALI/ARDSにおける好中球活性化の機序,活性化好中球の肺内集積や組織破壊のメカニズムについて概説する.
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