特集 ARDS
4.画像診断―画像検査の位置づけと画像所見の意味
松本 純一
1
,
新美 浩
2
Junichi MATSUMOTO
1
,
Hiroshi NIIMI
2
1聖マリアンナ医科大学 救急医学
2聖隷横浜病院 放射線科
pp.33-39
発行日 2009年1月1日
Published Date 2009/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100161
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ALI/ARDSは,発症経過,酸素化能,胸部単純X線写真所見,左心不全の否定,の4項目からなる診断基準により診断される臨床疾患概念で,さまざまな病態を包含する。その本態は,好中球主体の非特異的炎症により,肺胞領域の血管内皮・肺胞上皮が「びまん性」に傷害を受け〔びまん性肺胞傷害diffuse alveolar damage(DAD)〕,その結果水分とタンパク成分とが肺胞腔や間質に漏れ出る透過性亢進型の肺水腫である1~3,5)。背景となる基礎疾患とその程度はさまざまであり,また病理学的所見であるDADについても,傷害期間に依存して可逆的で構造改変をきたさない(血管透過性亢進型)肺水腫から高度の構造改変を伴うものまでが存在するため,本病態は,治療反応性や予後にも幅がある,幅広いスペクトラムのheterogeneousな疾患群であると認識しなくてはならない。
ALI/ARDSの診療において画像診断が利用できる場面は多く,診断(除外診断を含む),経過観察(治療反応性の検討を含む),合併症や随伴症の検索のほか,予後予測や人工呼吸器の設定に有用な情報の検出までさまざまである3~5,8~10)。ただし,ALI/ARDSという病態の診断自体は,あくまでも臨床所見から得られる情報を基に診断基準に従ってなされるべきものであり,何となく重症感のある画像所見をみて,「これはARDSでしょうか?」といった判断を求めるコンサルテーションは的外れである。
本稿では,ALI/ARDS診療において画像診断を有効活用できるよう,画像検査の位置づけや画像所見の意味するところ,注意点などについて解説する。
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