連載 2024のシェヘラザードたち 第9夜
筋弛緩モニターを使おう
小林 求
1
1社会医療法人北晨会 恵み野病院 麻酔科
pp.1211-1214
発行日 2024年12月1日
Published Date 2024/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101203128
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30年間麻酔科医をやってきて,これだけは必要だと思うモニターが一つある。それは筋弛緩モニターである。日本麻酔科学会も『安全な麻酔のためのモニター指針』1)のなかで「筋弛緩薬および拮抗薬を使用する際には,筋弛緩状態をモニタリングすること」と記しており,日常的な使用を推奨している。しかし民間病院などでは,筋弛緩モニター自体がなかったり,すべての手術室に十分な数が足りていなかったり,あっても装着が面倒だったりと,いまだに日常的には使用していないことも多いのではないだろうか? さらには,そんなものは必要ないと思っている読者もいるかもしれない。
確かにスガマデクスが発売されてからは迅速に筋弛緩の拮抗ができるようになり,筋弛緩薬の管理は楽になった。しかし,筋弛緩薬の作用持続時間には個人差が大きく,スガマデクスで拮抗しても再クラーレ化したとの報告2,3)もあるし,なんと言っても筋弛緩薬のトラブルは患者の命に直結する。鎮静薬や局所麻酔薬は他科の医師もよく使用するが,筋弛緩薬を日常的に使用しているのは麻酔科医のみであろう。手術部位や術式,麻酔法によって必要な筋弛緩状態をモニタリング下に適切にコントロールすることは麻酔科医として大切な技術だと思う。
本稿では私が医師2年目に経験した,筋弛緩状態のモニタリングの重要性を痛感した症例を紹介したい。当時,私は1年間大学病院の麻酔科で研修した後,地方の国立病院で麻酔科研修医として働いていた(麻酔科医は研修医の私を含めて4人いた)。
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