- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
Anesthesiology
Editorial:
Cooper JB, Lane-Fall MB. Anesthesia needs to lead the way in safety-again-through the universal adoption of structured handoffs. Anesthesiology 2024;140:355-7.
Article:
Saha AK, Segal S. A quality improvement initiative to reduce adverse effects of transitions of anesthesia care on postoperative outcomes:a retrospective cohort study. Anesthesiology 2024;140:387-98.
■麻酔中のhandoffは患者の予後を悪化させる
麻酔中にはしばしば麻酔科医が交代する。休憩や食事などの短時間のbreakもあれば,症例をそのまま引き継ぐような場合もある。私がマサチューセッツ総合病院でレジデントだった頃は,麻酔導入が終わり,麻酔管理がやや落ち着いた2時間後くらいに15分程度のbreakをattending anesthetistがくれた。その15分を利用してトイレに行き,コーヒーを飲みながらピーナッツバターとブルーベリージャムをたっぷり載せたクラッカーを頬張り,同じくbreak中のほかの麻酔科医と情報交換する楽しみがあった。breakに入る際には,1〜2分程度で患者の術前・術中状態,これから予想される状態,出血量や尿量,輸液量や輸血準備,準備した薬剤や次に投与が必要な薬物の確認などを行い,最後に血圧測定をしてから交代したものである。交代で入るattending anesthetistは,麻酔管理をフレッシュな目で見直し,麻酔器やモニターのチェックを行うなどして,軌道修正をしばしば行っていた。このようなshort breakは麻酔の安全性を向上させるものと考えられていた。しかし,麻酔科医が症例の後半をすべて引き継ぐhandover(handoff)となると,患者の予後を悪化させるという多くの論文がある(Anesthesiology 2014;121:695-706, Anesth Analg 2016;122:134-44など)。これはhandoverの際に,患者の細かい情報や,担当麻酔科医がもつ微妙な感覚的情報が失われることと関係しているともいわれている。そこで,Joint Commission(米国医療施設認定合同機構)は2006年からstructured handover(系統的な引き継ぎ)を全国的に導入することを目標とした。
Copyright © 2024, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.