症例ライブラリー 小児の術中気道トラブル
コラム 覚醒抜管と深麻酔下抜管
北村 祐司
1
Yuji KITAMURA
1
1松戸市立総合医療センター・小児医療センター 麻酔科・小児麻酔科
pp.222-224
発行日 2024年3月1日
Published Date 2024/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202846
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覚醒抜管が基本である
自然睡眠ですら気道呼吸にかかわる生理的機能は抑制されるわけであるから,麻酔からの不十分な覚醒が抜管の危険性にかかわることに疑いはない。その意味において,覚醒抜管は抜管法の基本であり,ほとんどの成人麻酔症例の抜管で選択されるゆえんでもあろう。麻酔薬による生理的機能の抑制には,覚醒レベルに応じた段階的(graded)な成分と,ある覚醒閾値を境に瞬時に切り替わる(on-off)成分がある。上気道の開通維持や胃食道の逆流防止機構など,気道保護にかかわる多くの生理的機能は,後者の成分が強いと考えられ,“意識”の有無を境に劇的に回復したり抑制されたりする1,2)。したがって,麻酔からの覚醒段階におけるBIS値の上昇は,生理的機能の段階的な抑制の回復はある程度推測できても,十分な回復を確認するのには向かない。一方で,顔の表情や合目的な動作など,“意識”を確認できる項目が多いほど覚醒抜管の成功率が高くなるというTempletonら3)の覚醒抜管成功予測は的を射ていると思う。小児における安全な覚醒抜管にはどれくらいの覚醒度が必要かをイメージできるようになるためにも,この予測で採用されている基準項目には一見の価値がある(表1)。
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