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Anesthesiology
Editorial:
Singh V, Cohen SP. Prolonging sympathetic blockade for complex regional pain syndrome:Is botulinum toxin the answer? Anesthesiology 2022;136:261-4.
Article:
Yoo Y, Lee CS, Kim J, et al. Botulinum toxin type A for lumbar sympathetic ganglion block in complex regional pain syndrome:a randomized trial. Anesthesiology 2022;136:314-25.
■ボツリヌス毒素の作用機序は?
ボツリヌス毒素(BTX)は,Clostridium botulinumが産生する毒素であり,神経筋接合部やアセチルコリン性神経節おけるアセチルコリン放出を抑制する。神経筋接合部への作用により弛緩性麻痺を起こす。BTXを含む食品を摂取すれば,ボツリヌス菌食中毒となり全身の筋力低下を起こす。きわめて毒性が高く,経口摂取した場合の致死量は1μg/kgといわれる。
BTXには,A,B,C1,C2,D,E,F,Gのサブタイプがあるが,臨床的に用いられているのはBTX-AとBTX-Bである。BTXは,重鎖(100kDa,結合サブユニット)と軽鎖(50kDa,活性サブユニット)から構成される単鎖ポリペプチドである。重鎖がコリン作動性神経のシナプス前終末に不可逆的に結合し,軽鎖が神経毒としての作用をもつ。軽鎖はエンドサイトーシスによって細胞内に取り込まれ,シナプス小胞とシナプス前膜に存在する3種のSNAREタンパク質を切断し,破壊する。その結果,シナプス小胞と細胞膜との結合が起こらなくなり,アセチルコリン放出が阻害され,神経伝達が起きなくなる。BTXは,神経筋接合部だけでなく,自律神経系のコリン作動性神経節にも作用する。神経筋接合部での効果は2〜3日して出現し,2〜6週間で最大効果に達する。ただし,BTXは血液脳関門を通過しないので,中枢神経系への効果はない。また,BTXはグルタミン酸放出抑制,サブスタンスP放出抑制を起こし,神経性炎症の抑制も起こす。
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