徹底分析シリーズ 硬膜外さいこう
硬膜外は最高? 再考?
森本 康裕
1
,
吉村 学
1
Yasuhiro MORIMOTO
1
,
Manabu YOSHIMURA
1
1宇部興産中央病院 麻酔科
pp.790-793
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202046
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
筆者が麻酔科に入局した1988年当時,全身麻酔に硬膜外麻酔を併用するというのはまだ一般的ではなかった。大きな開腹手術でも術後鎮痛はペンタゾシンの筋注程度で,患者は痛みのために長期間離床することができなかった。昭和天皇の腹部手術が1987年。その折に当時東京大学の麻酔科助教授であった諏訪邦夫先生が全身麻酔に硬膜外麻酔を併用したことがきっかけとなり,保険適用が認められた1)。全身麻酔+硬膜外という麻酔法は徐々に一般的になった。当時は「天皇陛下と同じ麻酔です」と患者に説明すると評判がよかった。当初は手術終了時にモルヒネの単回投与だったが,ディスポーザブルのインフューザーが使用できるようになり持続投与が可能となった。ところが21世紀になると術後の肺塞栓症が問題となり,低分子ヘパリンやフォンダパリヌクスなどの抗凝固療法が行われるようになったことでその立場が微妙になってきた。
本稿は硬膜外を再考するという立場から令和時代の硬膜外麻酔の立ち位置を考える。
Copyright © 2021, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.