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Gタンパク質共役型受容体(G protein-coupled receptor;GPCR)は7回膜貫通型の構造的特徴を持つ膜タンパク質の総称で,哺乳類では約800種類から成るスーパーファミリーを形成している。GPCRはホルモンや神経伝達物質などの内因性リガンドのほか,光や匂いなどの外来刺激にも反応し,多くの病態にも関与して創薬の主要な標的となっている。
GPCRの高次構造については,全体の約8割を占めるロドプシン型受容体ファミリー/クラスA(分類と構造の詳細は他の文献を参照)を中心に結晶解析が進んでいる。その構造は,7本のαヘリックスが環状に並ぶ膜貫通部分をコアとし,細胞外側に作るポケットがN末端とループ部分の細胞外ドメインと共にリガンド結合部位を形成する。リガンドの結合によりコンホメーション変化が生じ,細胞内ドメインに結合する三量体Gタンパク質を介して下流シグナルが活性化される。一方,GPCRの活性化後にはGPCRキナーゼ(GRK)によって細胞内ドメインがリン酸化され,その結果Gタンパク質との結合が解除されてアレスチンが結合し,エンドサイトーシスによりエンドソームとして細胞内に取り込まれるとされている。この後GPCRはライソゾームにより分解されるか,リサイクリング機構によって再び細胞膜に運ばれ,受容体機能を再開する。更に最近,エンドソーム内のGPCRの再活性化や,アレスチンを介するGタンパク質非依存性のシグナル機構の存在も注目されている(図)。
GPCRは不活性型と活性型の2状態だけでなく,様々なコンホメーションの間でゆらいでおり,その平衡状態がリガンドの有無や修飾状態,結合タンパク質の存在などによって遷移する。この多状態モデルにおいて,ある活性化状態へと平衡をシフトさせる薬物がアゴニスト,不活性状態へとシフトさせる薬物がインバースアゴニストと定義される。アンタゴニストはそれ自体平衡状態に影響を与えず,内因性リガンドやアゴニストによる活性化状態へのシフトを阻害する薬物と理解される。
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