徹底分析シリーズ 心臓麻酔ステップアップ:オフポンプ冠動脈バイパス術
巻頭言
坪川 恒久
1
1東京慈恵会医科大学 麻酔科学講座
pp.425
発行日 2017年5月1日
Published Date 2017/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200845
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- 文献概要
冠動脈バイパス術は心臓表面の冠動脈に対して操作を加える心外手術であり,主に人工心肺を用いるオンポンプ手術と,用いないオフポンプ手術の二つの方法がある。人工心肺を用いる場合は,心静止と低体温により心筋の酸素消費を抑えて心筋を保護するが,オフポンプ手術の心臓は,自らの拍出によって自ら(自己心筋)を灌流して,必要な酸素供給を行わなければならない。この心臓を,外科医は脱転させ,時には倒立させて手術を進めていく。血圧低下時には,灌流圧低下→心筋虚血→拍出量低下→血圧低下→さらなる灌流圧低下→…という悪循環を形成しやすい。逆に,血圧上昇,心拍数増加時には,酸素消費量が増大し,心臓の拍動が大きくなり,繊細なバイパス吻合がやりにくくなってしまう。さまざまなバランスをとりつつ循環を維持して手術を完遂していくために,外科医,麻酔科医,看護師がそれぞれの立場からスキルを発揮しなければならないのが,オフポンプ冠動脈バイパス術である。
本徹底分析シリーズでは,この手術に長けた施設に,そのエッセンスの一部を公開していただいた。これらをすぐに実践することはかなわないかもしれないが,次のステップアップを目指すうえでの道標として欲しい。
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