徹底分析シリーズ “エビデンス”に立ち向かう
コラム:誰が利益を得ているのか?
張 京浩
1
Kyungho CHANG
1
1東京大学医学部附属病院 医療機器管理部・麻酔科
pp.1035
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200700
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さまざまな意味合いを込めて,「統計的有意差=薬の力×製薬会社の努力」という関係が成り立つのではないかと指摘されている1)。実際,製薬会社がスポンサーとなって実施された臨床試験では,公的資金で支援された臨床試験より,2〜4倍の比率でその製薬会社の製品に有利な結果が出ていると報告されている2,3)。もちろん,企業の関与がそのまま論文の不正やspin(ねじれ)に直結するとはいえないし,医学研究一般を企業のサポートをなしにすることも現実的ではない。学術的な意味でも,薬の効能に関して,企業側はより詳細なデータをもっているはずである。最近,問題となったKyoto Heart StudyとJikei Heart Studyでの不正発見の発端は,統計解析に企業の社員がその身分を隠してかかわっていたことであった。隠していたことが怪しいと疑われ,実際,怪しかったわけだが,もしその関係性が初めからオープンになっていれば,それ自体はあの時点で大きな問題とはならなかっただろうという指摘もある。
そうはいっても,企業の臨床試験への関与には潜在的なリスクが伴うことは十分認識する必要はある。実際のところ,企業が社員に課す第一の要求は,企業活動への同意であり,第二に,企業に利益をもたらすこと,といえるからだ。金は出すが口は出さない,という高潔な企業がないとはいわないが,少数であることは間違いないであろう。
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