症例検討 冠攣縮
コラム:常に正確な心電図診断を!
張 京浩
1
,
玉井 悠歩
1
Kyungho CHANG
1
,
Yuho TAMAI
1
1東京大学医学部附属病院 麻酔科
pp.1010-1012
発行日 2013年10月1日
Published Date 2013/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101950
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麻酔中の冠攣縮性狭心症発症例を検討した報告を見ると,Koshibaらの115例の解析1)では死亡例はなく,また,筆者らが行った非心臓手術に限った56症例の解析2)でも,心筋梗塞が3症例に死亡が1症例であった(表1)3)。どちらも症例報告の集積なので決定的な結論は出しにくいが,術中の冠攣縮性狭心症発作は,市中で起こった冠攣縮性狭心症発作*1と比べて,予後良好である可能性が示唆される(メモ1)。
ところが,随伴する臨床症状は決して軽症ではなく,高度血圧低下,心停止を含む重篤な不整脈がしばしば認められている。それにもかかわらず,術中冠攣縮性狭心症の臨床転帰が比較的良好な要因の一つとして,術中は麻酔科医が綿密に心電図変化をモニターしているため,心筋虚血の診断を迅速に行うことが可能で,冠拡張薬を即座に使用できる状況であることが考えられる。
しかし,心電図変化から心筋虚血を診断することは必ずしも容易ではない。「心窩部不快感がある患者の開腹胆囊摘出術中の冠攣縮」(1004ページ)の症例においても,心筋虚血発症直後はT波の先鋭化を認めるのみで(1004ページ図1-B参照),この時点で冠攣縮性狭心症による心筋虚血と診断するのは難しい。
本稿では,筆者が経験した興味深い(といっても教科書的ではあるが)心電図変化を示した症例を紹介し,急性心筋虚血における心電図診断の重要性を強調したい。
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