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読者にはまず,図1を参照していただきたい。これはMEGA study1)と称され,スタチンの冠動脈疾患に対する一次予防効果を検証した日本の大規模臨床試験の主要な結果を示すグラフであり,2006年,Lancet誌に掲載された。40〜70歳で冠動脈疾患および脳卒中の既往のない高コレステロール血症患者(総コレステロール値 220〜270mg/dL)7832例を約6年追跡調査したところ,冠動脈疾患(致死的または非致死的心筋梗塞,心臓突然死,狭心症,冠血行再建術)の新規発症が,プラバスタチン群で33%抑制された(p=0.01)ことを示している。加えて,治療必要数number needed to treat(NNT)は119人であり,1人の冠動脈疾患の発症を予防するのに119人にプラバスタチンの服用が必要となったことを示している。ちなみに,当時のプラバスタチンの薬価は約200円/日で,6年間でおおむね5,000万円を投資することで,1人の患者をrescueするという計算になる。医療費はひとまず脇に置くとして,この研究やその結論自体には,特に問題はないように思われるし,何よりも“Lancet”に掲載された論文である。
では,例えば250mg/dL以上の高コレステロール血症の患者には,おしなべてスタチンの服用を勧めるべきなのだろうか。そこで試みに,このグラフの縦軸の上限を100%に書き換えてみよう(図2)。データ自体に何の操作もしていないが,この研究結果に対する印象はガラリと変わるのではないか。
以上の指摘は,東京大学医学部附属病院臨床研究支援センター教授の山崎 力先生のテキスト2)からの引用である。筆者はこの本を読み,研究結果を鵜呑みにする危険性に初めて気づかされた。
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