徹底分析シリーズ “エビデンス”に立ち向かう
RCTは倫理的か?—「医者の心のうずき」と「患者の心の抵抗感」
張 京浩
1
Kyungho CHANG
1
1東京大学医学部附属病院 医療機器管理部・麻酔科
pp.1054-1057
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200704
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
もう25年以上も前のことである。日本集中治療医学会で,ウイルス感染症の教育セミナーがあった。演者は,「ヘルペス脳炎の死亡率は高く,疑われたらすみやかにアシクロビルを投与すべきである。その効果はすでにRCTではっきり示されている。そのRCTは外国で行われたものだが,しかし彼らはすごいことをするな,ヘルペス脳炎とわかったら全力で治療にあたるべきなのに,無治療の群と比較している」と話していた。まさか無治療の群はないにしても,アシクロビル群に割り付けられなかった患者は気の毒だなと漠然と感じた。これが,「RCTは,その本質からして,そもそも倫理的と言えるのだろうか」という疑問を医師として感じた第一の経験であった。
Copyright © 2016, MEDICAL SCIENCES INTERNATIONAL, LTD. All rights reserved.