徹底分析シリーズ “エビデンス”に立ち向かう
巻頭言
張 京浩
1
1東京大学医学部附属病院 医療機器管理部・麻酔科
pp.1021
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200697
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- 文献概要
現在の日々の臨床でEBMを意識しない日はないといってもよいでしょう。しかしエビデンスという言葉が医学用語として市民権を得たのはせいぜいこの20年くらいで,EBMという言葉がまだなかった時代でも,医師は論文を探し,読み,吟味して,臨床を行ってきたはずです。本誌においても,巻末の「Editorial拝見」で稲田編集主幹は重要な臨床論文を紹介しながら,「さて皆さん,明日からの臨床にこの論文の結論をどう生かしますか?」と繰り返し問いかけていますが,まさにこの問いかけこそEBMの本質と思われます。ところが近年,RCTやメタ解析を渉猟して,そういう座学で得た結論がそのまま臨床上の答えであるかのように主張する風潮があり,多少の違和感を感じてきました。これは昭和の時代に医師となった筆者のひがみなのかとも思っていましたが,最近,EBM的手法に最も精通している専門家からも同様の指摘があることを知り,今回の徹底分析を企画しました。
本企画は,EBM的手法を皮肉ろうとか,もとより,頭ごなしに否定しようとする意図は毛頭なく,よりよいEBM的手法を目指してのものであります。その気持ちを込めて「“エビデンス”に立ち向かう」というタイトルをつけました。執筆いただいた各稿はどれも素晴らしく,EBM的手法に伴ういくつかの問題点に,今回新たな光を当てることができたのではないかと思います。読者の皆様にも,是非,楽しみながら読んでいただき,どう立ち向かうかを考えていただきたいと思います。
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