連載 今日も山日和:雲の上の診療所
第9座:剱沢診療所
山田 真平
1,2
1金沢大学附属病院 周産母子センター
2金沢大学附属病院 小児科
pp.894-895
発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200668
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名峰剱岳を望む診療所
富山県東部に位置する立山は,熊に化けた阿弥陀如来に導かれた佐伯有頼公が開山したという伝説がある。地獄や極楽のある山として古来から信仰を集め,江戸の頃にはすでに登山客が絶えず,現在では北アルプス北部の一大拠点として,毎年数十万人の登山客・観光客が訪れる。昨年の北陸新幹線開業後はさらに来客数が増加し,夏山シーズンには老若男女,国籍を問わず多くの人で賑わっている。
金沢大学十全山岳会では現在,この山域に立山室堂診療所・雷鳥沢診療所・剱沢診療所の三つを構え,60年に渡り山岳診療活動を続けている。剱沢診療所は,三つのうちで最も奥に位置する。岩と雪の殿堂として知られる名峰・剱岳のベースキャンプたる剱沢野営場に位置し,野営管理所の一室で診療活動を行っている。室堂バスターミナルまではバスやケーブルカーで容易にアクセスできるが,剱沢に至るにはそこから徒歩で約4時間を要する。ほとんどの滞在者は剱岳本峰を目指す登山家によって占められる,濃い空間である。
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