連載 今日も山日和:雲の上の診療所
第2座:三俣診療所
臼杵 尚志
1
1香川大学医学部附属病院 手術部
pp.94-95
発行日 2016年2月1日
Published Date 2016/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200487
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最も人里離れた診療所
1964年に開設された三俣診療所は,三俣蓮華岳と鷲羽岳との鞍部*にある三俣山荘に併設されています(写真1)。標高は2550mと,山岳診療所としては決して高くありませんが,三俣蓮華岳は富山・岐阜・長野3県の県境に位置するので,北アルプスのなかでも山深い所といえます。街の灯から隔絶されているため,夜には見慣れた星座がわからなくなるほどの満天の星で空が埋めつくされます。麓から最も遠い診療所といわれていますが,なぜかその運営に当たっているのは,類似の活動をしている大学のなかでアルプスから最も遠い岡山大学と香川大学です。そのため,診療所への行程は最低でも2日かかり,山中で1泊してやっと到着します。多少過酷ともいえますが,皆,遠望する山々の姿や足元の可憐な高山植物に励まされながら歩き,途中で互助関係にある富山大学の双六診療所に挨拶するのも楽しみの一つです。
活動期間は約30日で,1〜8班に分けて担当します。開設担当の班は残雪を踏んで入山するのに比し,閉所の時期には雪渓もかなり小さくなります。疲れを癒す花々の種類も班により大きく変わります。
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