連載 今日も山日和:雲の上の診療所
第5座:上高地診療所
植木 彬夫
1
1高村内科クリニック
pp.406-407
発行日 2016年5月1日
Published Date 2016/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101200557
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上高地診療所の開設:山岳医療・地域医療の始まり
1923年,徳本峠を越えて上高地へやってきた東京医専(東京医科大学の前身)の医学生が,明神岳のS状ルンゼ登攀を終え,河童橋のたもとにある五千尺旅館(現・五千尺ホテル)に立ち寄った。その際,女将が脚気で苦しんでいると聞き,ビタミン剤を与えて軽快し感謝された。これが契機となり,翌1924年,日本で最初の山岳診療所とされる「東京医専山岳會診療所」の仮診療所が上高地小梨平に設置された。
1927年,五千尺旅館の丸山 尚氏の全幅の援助により,本格的診療所「東京医学専門学校山岳會高山医学研究所」を開設した(写真1)。1929年には燕山荘,槍ヶ岳殺生小屋にも開設した(1939年閉所)。診療は当初から医師と医学生を中心に夏期休暇や休日にボランティアで行われ,薬品や器材は大学や製薬会社からの寄付でまかなっていた。遭難現場まで捜索隊とともに登山し,患者を担いで下ろすこともあった。
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