徹底分析シリーズ 感染を防ぐ
医療従事者を守る対策:職業感染は予防が肝要―針刺しの予防・対処から,結核患者の麻酔での注意点まで
松田 和久
1
Kazuhisa MATSUDA
1
1済生会福岡総合病院 中央手術部
pp.454-457
発行日 2013年5月1日
Published Date 2013/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101820
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筆者が臨床麻酔研修をしていた1980年代は,点滴はもちろん,気管挿管時のクロスフィンガー法も素手で行い,出血する手術の麻酔では,血まみれとなるのが当たり前であった。また,この時代,手術室では滅菌手袋を再生していた。手袋は高価で,材質こそ違えど現在のように使い捨てなどとんでもなく,「研修医に使い捨て手袋なんてもったいない,素手でいいのだ」と言われていた。
さらには,「医師は肝炎になって一人前」という風潮が1970年代以前にはあったが,1980年頃に麻酔科医や内科研修医が立て続けに肝炎(おそらく職業感染)で死亡するというニュースが流れ,職業感染としてのB型肝炎を予防すべきだとされるようになった。当時,全国数施設ではB型肝炎ワクチンの治験がすでに行われており,職業病である肝炎に罹患したくない筆者は,すぐにワクチン接種治験に加わった。
現在では,針刺しなどで罹患する肝炎は,予防すべき/予防できる職業感染として認知されている。各医療施設に設置されている,医療関連感染(以前は院内感染と称した)対策委員会では,B型肝炎ワクチン接種とともに,針刺し対策とその集計・解析ソフトであるエピネット(EPINeT)が整備されている。
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