特集 医療従事者を針刺し事故から守る
針刺し予防対策と効果の測り方
木戸内 清
1
1名古屋市生活衛生センター
pp.427-430
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901431
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針刺し・切創は医療現場の災害 「誤刺」から「針刺し・切創事故」そして「針刺し・切創」へ
筆者が携ってきた名古屋市立東市民病院の「針刺し・切創予防(以下,針刺し予防)」活動は,1993年5月に「誤刺事故予防」対策専門部会が安全衛生委員会の下部組織として発足して始まった。その後,1997年に血液・体液汚染事故予防専門部会に改組すると同時に「誤刺事故」を「針刺し事故」に改め,活動を続けた。1999年に部長会のメンバーで構成する病院感染対策委員会の設立に伴い,その下部組織の病院感染対策実施部会の1部門へと組織体制を変えた。現在,「針刺し事故」の用語を「針刺し」に改めようとしている。この用語の変更は,針刺し予防対策の考え方の変遷を象徴している。
活動の当初は,針刺しの全体像や正確な要因などがわからなかった。なぜ,こんなに多くの職員が誤って自分を刺してしまうのか?この疑問から,単純に「誤刺」という言葉を採用した。しかし,針刺し状況を正確に把握できるようになった結果,誤って自分を刺すという表現は,針刺しが生じないことを前提にしており,針刺しが発生すると「不注意で,誤って」ということになってしまうことに気づいた。針刺しを予防するためには,「原因は不注意」「対策は注意」の堂々巡りから離脱して,「不注意」があったとしても針刺しを起こさないシステムを追求する必要を知り,「誤刺」ではなく「針刺し事故」にすべきであると判断するようになった。
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