特集 医療従事者を針刺し事故から守る
針刺し事故報告書EPINet日本版の使い方
松田 和久
1
1済生会福岡総合病院・麻酔科
pp.421-426
発行日 2001年6月10日
Published Date 2001/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1686901430
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はじめに
一昔前,医師は肝炎にかかって当たり前,肝炎になるくらいでないと医師として一人前ではない,という風潮があった。事実,先輩がそう言っているのを近くで聞いたことがある。当時は,職業上の感染を防止しようという考えが希薄だったと言わざるをえない。しかし,ウイルス肝炎やHIVの研究の進歩により,血液由来病原体の実態が明らかになるにつれて,血液・体液に対する考え方は大きく変わってきた。その最たるものが,血液・体液は全て感染性を有するものとして扱うユニバーサルプレコーション(universal precautions)という考え方である(米国CDC, 1987)。最近,これはスタンダードプレコーション(standard precautions)と改訂されたが,基本的には同じことである。これらの対応に伴い,わが国でもリスクマネジメントの考え方から,職業上の感染事故防止,特に針刺し事故対策が叫ばれるようになってきた。「針刺し事故」なる言葉が普及し,これは一種の労働災害であるという認識の下に,針刺し事故を予防しようという機運が高まってきている。
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