徹底分析シリーズ 周術期の凝固・線溶系の管理
血液凝固と抗線溶療法―世界に誇る日本の抗プラスミン療法
木倉 睦人
1
,
鈴木 祐二
1
,
佐藤 恒久
2
,
川島 信吾
3
Mutsuhito KIKURA
1
,
Yuji SUZUKI
1
,
Tsunehisa SATO
2
,
Shingo KAWASHIMA
3
1浜松労災病院(独立行政法人 労働者健康福祉機構)麻酔科
2JA静岡厚生連遠州病院 麻酔科
3浜松医科大学 麻酔・蘇生学教室
pp.252-260
発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101772
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読者の皆さんは,日本で1950年代に開発された抗プラスミン薬が,約半世紀以上経った今でも,世界中で止血薬として幅広く使用され,最近では,外傷患者の出血による死亡率を減少させる有効性が再発見されたことをご存知でしょうか。2012年の日本麻酔科学会(神戸市)のシンポジウムにおいて,「血液凝固と抗線溶療法」というテーマで話すことになった際,このテーマについて調べれば調べるほど,抗線溶療法のルーツは日本にあり,その恩恵を今でも世界中の人々が受けているということを強く感じました*1。
神戸大学の岡本彰祐博士らにより,1952年にイプシロン-アミノカプロン酸が世界初の抗プラスミン薬として発見され,1962年には,より強い抗プラスミン作用を持つトラネキサム酸が発見され,どちらも有効な抗プラスミン薬として,世界中に広まりました。ほかの薬物が,その効能が乏しかったり,副作用が重篤であったりしたために淘汰されたなか,日本発の抗プラスミン薬は今でも生き残り,周術期や外傷患者における有効な抗線溶薬として高く評価されています。
本稿では,周術期の血液凝固と抗線溶療法の観点から,日本が世界に誇る抗プラスミン薬を中心に,最近のトピックでもあるトロンボエラストメトリーにも触れながら解説します。
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