臨時増刊特集 これだけは知っておきたい治療のポイント 第2集
X.血液・造血器疾患
3.薬剤使用のコツ
抗プラスミン剤の使い方
青木 延雄
1,2
1自治医大血液医学研究部門
2自治医大内科
pp.2226-2227
発行日 1978年12月5日
Published Date 1978/12/5
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1402208316
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- 文献概要
はじめに
種々のストレスや炎症,組織損傷などにより,その局所や血中において,プラスミノゲン活性化因子が増加し,自然に存在する阻害因子との間の平衡が破れ,過剰にプラスミノゲンが活性化された状態が,病的な線溶抗進状態である.プラスミノゲンが活性化して出現したプラスミンはフィブリン溶解以外に,フィブリノゲン,第Ⅴ,第Ⅷ因子などの血液凝固因子を分解し不活性化したり,そのほかにもプレカリクレインを活性化し,キニン系を賦活して毛細血管透過性を亢進させ,また補体系を活性化させるなどの働きがあり,炎症反応を増強せしめ,またATCHを分解する作用を持つとされている.
このように線溶亢進は炎症やアレルギーなどにも関連を有しており,出血傾向を惹起するほかに種々の障害をきたすことに注目する必要がある.したがって,過剰な線溶の亢進は抑える必要があるが,一方,線溶活性は血液凝固活性といわば平衡状態を保ち,生体全体の動的平衡状態の一端を担っていることも事実であり,いたずらに線溶活性を抑え,その動的平衡を破ることは各種臓器におけるフィブリン析出ないしは血栓傾向の増大という好ましからざる状態をきたし,危険であることを十分認識する必要がある.したがって,抗線溶剤(抗プラスミン剤)は,病的線溶活性の亢進とそれに基づく各種障害に対してきわめて強力な武器ではあるが,一方,安易に不必要な抗プラスミン剤の投与を続けることは厳に慎むべきと考えられる.
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