徹底分析シリーズ 周術期の凝固・線溶系の管理
コラム:ROTEMⓇとHEPCONⓇの使い方―point of careの利点を最大限に活かすために
坪川 恒久
1
Tsunehisa TSUBOKAWA
1
1金沢大学医薬保健研究域 麻酔・蘇生学
pp.262-267
発行日 2013年3月1日
Published Date 2013/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101101773
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麻酔中の緊急事態は突然やってきて,詳しい検査をする時間もなく,ただちに対処を必要とする場合が多い。大量出血は,そのような緊急事態の代表的なものであろう。大量出血時には,まず,循環動態を維持するために輸液・輸血が行われるが,これが適切に行われないと,血小板,凝固因子の欠乏により,さらなる出血をきたすことになってしまう。
これまで,「何をどれくらい使うか」という戦略を立てるために必要な,迅速で十分な情報量を持った検査方法がなかった。出血の性状から凝固障害があることがわかっても(術者が“血が止まりにくい,シャバシャバだ”と訴えてくる),それが何らかの抗凝固作用(ヘパリンなど)によるものなのか,血小板,凝固因子の欠乏なのか,はたまた線溶の亢進なのかを判断する材料がなかったのである。
また,情報は新鮮でなくてはならない。術中の大量出血に対して「次にどんな輸液・輸血あるいは薬物を使うか」という判断をするのに,30分も待つことはできない。正確な検査方法であっても,結果が出るまでに1時間もかかるようでは,われわれ麻酔科医の役には立たない。手術の進行状況,患者の状態を把握し,必要な血液製剤を先読みして準備するためには,迅速に結果が得られる検査方法が必要である。
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