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気道確保の手段で気管挿管が最も確実であることに異論はないだろう。しかし,気管挿管は一定の頻度で挿管困難が発生する。このため,挿管困難に対して確実かつ安全に挿管を行うことは麻酔科医にとってきわめて重要である。ある方法で挿管が困難な場合,別の方法を選択するが,最近はさまざまな挿管器具が使用可能であり,今後も多くの器具が臨床でも使用可能となるだろう。この点からいえば,ファイバースコープによる挿管(ファイバー挿管)も数多くある手段の一つである。しかし,ファイバーはほとんどの病院の手術室で使用可能であり,上気道だけでなく下気道の観察や処置も可能であることから,気道管理を行う麻酔科医には必須の手技といえる。
このように重要性の高いファイバー挿管だが,習得の過程はさまざまであろう。若手医師にとっては,「今日の症例の挿管はファイバーでやるから」と指導医から急に言われ,いざ始めてみると画面が真っ赤または真っ白で,何を見ているかわからない。そうこうしていると,指導医にファイバーを取り上げられ,「ファイバー挿管って難しいなぁ」と感じた人も少なくないだろう。逆に,ファイバーを恐る恐る咽頭に進めると,すでに目の前には声帯が見えており,挿管も簡単で「心配したのに,ファイバー挿管って以外と簡単だな」という経験を持った人もいるかもしれない。
挿管困難発生率の報告はさまざまあるが,多くても数%程度であり,症例数は豊富にあるわけではない。また,挿管困難でもファイバー以外の方法で挿管することも考えられる。そのためファイバー挿管の症例も限られる。これに対して,ファイバー挿管に習熟するには約50症例が必要という報告もある。つまり,ファイバー挿管は重要であり必須の手技にもかかわらず,トレーニングの環境は不十分で,on the job trainingでは限界があるといえるだろう。
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