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気道のうち,輪状甲状膜部〔解剖学用語では(正中)輪状甲状靭帯〕は,声門下気道で一番皮膚に近い部位である。それ故,声門上で気道確保困難な症例では,外科的緊急気道確保の目的でこの部位が穿刺・切開され,カニューレが挿入される。すなわち“can not ventilate, can not intubate(CVCI)”状態の患者へ最終的な緊急気道確保を行ううえで,重要な解剖学的な部位である1,2)。
輪状甲状膜表層には大きな動静脈がなく,また重要な神経もないため,一般的には輪状甲状膜切開において重篤な合併症は少ないといわれる。しかし,麻酔科医にとってはまれに行う救命手技となるため,どのような合併症が生じ得るかを解剖学的に理解することは必要不可欠である。
熟練の医師は迅速に,かつ大胆に輪状甲状膜切開を行う。それは,体表から輪状甲状膜部を見るだけで,皮下の気道,血管,筋肉の走行を三次元的にイメージできているからである。二次元の解剖学書と異なり,皮膚からの深さなどを三次元的にイメージすれば,メスの動きも速くなる。そのようなイメージを本稿により習得できれば,より早く安全確実な手技を習得できると考える。
気管支鏡を用いたファイバー挿管においても,ファイバーで映しだす画像が,立体感のある(奥行きのある)3D画像で提供できれば,ファイバーの進行距離や先端の屈曲度合いも操作しやすくなり,手技が確実になると考える。身近な例を挙げれば,縦列駐車は立体ナビゲーションシステムにより初心者ドライバーでも簡単に行えるようになった。ファイバー挿管においても,このようなイメージを頭中に描けるようになれば,操作はより迅速かつ正確になし得ると考える。
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