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重症熱性血小板減少症候群(severe fever with thrombocytopenia syndrome;SFTS)は,フェヌイウイルス科バンダウイルス属へと新たに分類されたデイビーバンダウイルス(近年,分類科学上のウイルス名称が頻繁に変更されることから,学術的にも通称であるSFTSウイルスという名称が使用されている。本稿でもSFTSウイルスと表記する)によるダニ媒介性の新興感染症である。これまでにわが国をはじめ,中国,韓国,ベトナム,台湾という主に東アジアの国々でSFTSの患者が報告されており,わが国では最初の患者が2013年に報告されて以来,毎年70名以上の患者が発生している。SFTSは血液・血管系の障害に伴う多様な臓器障害をもたらすウイルス性出血熱の一つで,その致死率は15-25%程度に及び,わが国でもこれまでに70名以上がSFTSにより亡くなっている。2017年以降では,国内のネコやイヌなどがSFTSウイルスに感染し発症した報告が相次ぎ,SFTSウイルス感染動物から飼い主や獣医療関係者への感染も報告されるため,ヒトと動物の双方で問題となる人獣共通感染症として早急な対応が求められる。
ウイルス性出血熱では,病原体によらず臨床病態の類似性がみられる一方で,その発病機構は病原体により異なる。感染症の発病機構に関する知見は,適切な予防・治療法の開発などの感染症対策を講じていくために必要不可欠である。感染症の発病機構の解明には,感染症で亡くなった方の病理解剖による解析が有用である。これまで,わが国ではSFTSで亡くなった方の多くで病理解剖が実施され,様々な知見が報告されてきた。筆者らはSFTS患者の病理解析を行い,大型異型リンパ球の壊死性リンパ節炎や,リンパ組織での血球貪食像というウイルス出血熱のなかでも珍しい独特な病理所見があることを報告した1)。更に,リンパ組織と非リンパ組織の両方でSFTSウイルス抗原はIgGを発現するB細胞に局在し,B細胞から形質細胞へと分化する過程の形質芽球がウイルスの標的細胞であることを見いだし2),SFTSは多くのウイルス性出血熱で明らかにされてきた単球系細胞が中心的な役割を果たす発病機構とは全く異なる,B細胞を主軸とした独特な発病機構を有していることを明らかにした。本稿では,それらの成果と今後の課題を最新の知見を踏まえて紹介する。
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