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特集 生物物理学の進歩—生命現象の定量的理解へ向けて
Ⅲ.個体,進化レベル
大腸菌化学走性における感知・応答の情報論的な最適性
Information-theoretic optimality in the sensory system of bacterial chemotaxis
中村 絢斗
1
,
小林 徹也
1,2
Nakamura Kento
1
,
Kobayashi J. Tetsuya
1,2
1東京大学大学院情報理工学系研究科
2東京大学生産技術研究所
キーワード:
大腸菌化学走性
,
ベイズフィルタ
,
非線形性
Keyword:
大腸菌化学走性
,
ベイズフィルタ
,
非線形性
pp.239-244
発行日 2021年6月15日
Published Date 2021/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425201355
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生物は大腸菌から人間まで,環境の変動を認識し適切に応答へとつなげる多様で高感度な感覚系を有している。一方で,生体,特に細胞内においては,素過程である細胞内反応が大きな確率性やゆらぎを示す。感知やその処理過程に確率性を持ちながら,細胞系が適切に環境変動に応答できるメカニズムは完全には理解されていないが,情報理論を用いた解析などにより,細胞や生体がゆらぎを持つ観測シグナルから,その背後にある環境変動についての物理限界に近い推定をしていることが示唆されている。しかし,どのような細胞内反応系が物理限界を達成する推定を実現できるのかはほとんどわかっていない。
本稿では,化学走性に必要な環境のリガンド濃度情報を取り出す大腸菌のセンサ系が,最適な推定を実現するシステムの物理的実装として捉えられることを,最適フィルタの理論を応用することで示す。
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