Japanese
English
仮説と戦略
オレキシンの多様な機能
Divers functions of orexin
櫻井 武
1
Sakurai Takeshi
1
1金沢大学医薬保健研究域医学系分子神経科学・統合生理学分野
pp.595-603
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200358
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オレキシンは,視床下部外側野(lateral hypothalamic area;LHA)に散在するニューロン群によって特異的に産生される神経ペプチドであり,睡眠覚醒の制御に重要な役割を果たしている。オレキシンは33アミノ酸残基から成るオレキシンAと28残基から成るオレキシンB(ヒポクレチン-1および-2とも呼ばれる)から成る二つのアイソペプチドメンバーによって構成される神経ペプチドファミリーである。オレキシンAとオレキシンBはオレキシン1受容体(orexin receptor 1;OX1R)とオレキシン2受容体(orexin receptor 2;OX2R)に作用する(図1)。オレキシンは強力な内因性の覚醒維持物質として注目を集めており,オレキシン受容体拮抗薬は次世代の睡眠導入薬として期待されている(表)。しかし,オレキシンは睡眠覚醒制御のみではなく,様々な生理機能に関与していると考えられている。オレキシン系は,特に情動や報酬系と密接な関連を持っており,情動や報酬はオレキシン系を介して覚醒に影響を与えると考えられている。
オレキシンニューロンは,LHAとその周辺,脳弓周囲領域,背内側視床下部や後部視床下部に特異的に局在する。これらのニューロンは生体内外の情報を受け,必要な覚醒状態を維持する機能を持っている。また,覚醒のみではなく,自律神経系,内分泌系,報酬系など様々な機能との関連が示されている。逆の言い方をすれば,覚醒はそれらの機能と密接に関連しており,オレキシンはそれらの機能をリンクするシステムであると言える。
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