特集 現代医学・生物学の仮説・学説2008
5.神経科学
オレキシンによる行動制御
桜井 武
1
Takeshi Sakurai
1
1金沢大学大学院医学系研究科分子神経科学・統合生理学
pp.440-441
発行日 2008年10月15日
Published Date 2008/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100550
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オレキシンAとBは摂食行動を制御する神経ペプチドとして発表された。その後,オレキシンの欠損とナルコレプシーの関連が明らかにされ,覚醒・睡眠状態の維持に重要であることが示された。近年,オレキシン産生神経の入出力系の解明により,大脳辺縁系,摂食行動の制御系,覚醒制御システムとの相互の関係が明らかになり,オレキシン産生神経は情動やエネルギーバランスに応じ,睡眠・覚醒を適切に制御し,行動を統合的に制御する機能を担うことが明らかになってきた。
オレキシンAとBは共通の前駆体から生成される1)。オレキシンを発現する産生神経(オレキシン産生神経)は視床下部外側野(LHA)に限局して存在しているが,オレキシン産生神経は小脳を除き,中枢神経系全域に投射している。特に,睡眠・覚醒制御に関わるモノアミン作動性産生神経の起始核,青斑核(LC),縫線核(RN)や結節乳頭体核(TMN),腹側被蓋野(VTA)やコリン作動性神経の起始核である外背側被蓋核(LTD)や脚橋被蓋核(PPT)に密な投射が見られる。オレキシンの受容体,OX1RおよびOX2Rも脳内に広範な部位に分布するが,そのパターンはサブタイプにより異なっている。たとえばLCではOX1Rのみが発現しているのに対し,TMNではOX2Rのみが発現している。VTAにはOX1Rの強い発現が見られる。
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