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解説
着床前胚と始原生殖細胞におけるDNAメチル化リプログラミング
DNA methylation reprogramming in pre-implantation embryos and primordial germ cells
中村 肇伸
1
Nakamura Toshinobu
1
1長浜バイオ大学バイオサイエンス学部エピジェネティック制御学研究室
pp.604-610
発行日 2015年12月15日
Published Date 2015/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200360
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受精から始まる哺乳動物の個体発生では,受精卵は細胞分裂,増殖,および分化を繰り返し,最終的に様々な形態や機能を持つ200種類以上の細胞へと分化していく。DNAの塩基配列により規定される遺伝情報は,一部の例外を除いてすべての細胞で同一である。しかし,受精卵から分化した多様な細胞は,それぞれの細胞に必要な遺伝子だけを発現させ,不要な遺伝子の発現を抑制している。このような,DNA塩基配列の変化を伴わない遺伝子発現制御は“エピジェネティック制御”と呼ばれ,DNAのメチル化がヒストン修飾と共に中心的な役割を果たしている。
DNAのメチル化は,DNAメチルトランスフェラーゼ(DNA methyltransferase;Dnmt)がCpGジヌクレオチドのシトシン5位の炭素にメチル基を付加することにより5-メチル化シトシン(5-methylcytosine;5mC)に変換させることから生じる。細胞が発生・分化の過程で獲得したDNAメチル化は,“記憶”として娘細胞に受け継がれ,それぞれの細胞に固有の遺伝子発現を保証している。しかし,哺乳類では受精直後の初期胚と始原生殖細胞の段階で生じるリプログラミング(初期化)過程においてゲノム全体が脱メチル化される。本稿では,哺乳類の発生過程におけるDNAメチル化リプログラミングの分子機構と制御機構について概説する。
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