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特集 摂食制御の分子過程
オレキシン―摂食行動と覚醒システムをリンクする物質
Orexin at the interface of feeding behavior and sleep/wake behavior
原 淳子
1
,
桜井 武
1
Junko Hara
1
,
Takeshi Sakurai
1
1金沢大学大学院 医学系研究科 分子神経科学・統合生理学
pp.31-36
発行日 2011年2月15日
Published Date 2011/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101103
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エネルギーバランスは覚醒レベルに強い影響をあたえる。一方,摂食行動には適切な覚醒が必要であり,エネルギー恒常性と覚醒は相互に強く関連している。オレキシンはこの両者を結び付ける物質として注目されている。オレキシンは1998年に同定された神経ペプチドであり1),摂食中枢とされる視床下部外側野に局在する。マウス,ラットを絶食させると,オレキシンの発現量は増加する。また,ラット,マウスへのオレキシンの脳室内投与によって,摂食量の増加が観察されたため,当初,摂食行動の制御因子として報告がなされた。オレキシン神経はエネルギーバランスが負に傾いた時に活性化され,ドーパミン系,セロトニン系,ノルアドレナリン系,そしてヒスタミン系などを活性化することによって覚醒維持に関与する。絶食時のオレキシン系の興奮は食物探索行動も活発にする。一方,オレキシン産生神経の変性は,睡眠障害の一つであるナルコレプシーの病因であることが明らかとされており,オレキシンは覚醒制御とも深く関与していることが明らかとなっている。オレキシンは生命にとって必須である睡眠・覚醒の維持・摂食行動の関係を取り持つ物質であると考えられる。
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