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特集 精神医学と睡眠学の接点
オレキシンと覚醒・情動・行動
Orexin in Regulation of Wakefulness, Emotion, and Behavior
櫻井 武
1,2
Takeshi SAKURAI
1,2
1筑波大学医学医療系
2筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構
1Faculty of Medicine,University of Tsukuba,Tsukuba,Japan
2International Institute for Integrative Sleep Medicine(WPI-IIIS),University of Tsukuba,Tsukuba,Japan
キーワード:
Orexin
,
Narcolepsy
,
Wakefulness
,
Emotion
,
Insomnia
Keyword:
Orexin
,
Narcolepsy
,
Wakefulness
,
Emotion
,
Insomnia
pp.511-520
発行日 2017年6月15日
Published Date 2017/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405205398
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はじめに
オレキシンは,摂食行動の制御にかかわると考えられてきた視床下部外側野に局在し,また動物の脳室内に投与すると摂食行動・摂餌量が亢進することや,絶食によりその発現が増加することから当初,摂食行動への関与に注目された。その後,オレキシンの欠損がナルコレプシーの病因であることが明らかとなり,覚醒維持に必須の物質であることが明らかとなった。
オレキシンは,内因性の強力な覚醒誘導物質であり,その機能亢進は不眠症の病態生理にもかかわっている可能性が高く,本邦にて世界に先駆ける形で2014年末に発売されたオレキシン受容体拮抗薬は新しい機序の不眠症治療薬として話題を集めている。近年の研究より,大脳辺縁系,視床下部における摂食行動の制御系,脳幹の覚醒制御システムとの相互の関係が明らかにされており,また,主な出力先であるモノアミンニューロンの制御を介して,情動の制御にもかかわっていることが示されてきている。
オレキシンは情動や体内時計,エネルギー恒常性などに関する情報をもとに,適切な睡眠・覚醒状態を維持している22)。あらゆる行動を適切に遂行するには覚醒の維持が必須であるが,オレキシンはさまざまな行動をサポートするために,覚醒を維持する機能を果たすともに行動や情動の制御にも関与している。オレキシンの受容体には2つのサブタイプが存在しオレキシンの機能を機能分担しながら担っている。オレキシン受容体作動薬や拮抗薬は睡眠障害や不眠症のほか,パニック障害,不安障害,薬物依存などにも有効な治療薬となる可能性もある。
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