- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
RNA分解機構はRNAの量的調節ならびに異常RNAの生理的分解(RNA品質管理と呼ぶ)を担う重要な生化学反応である。RNA分解機構は,5'側からの分解(5'-exonuclease),RNA内部配列の切断(endonuclease),3'側からの分解(3'-exonuclease)に大きく分けられる(図)。5'側からのRNA分解には,decapping enzymeによる5'キャップの除去,3'側からのRNA分解にはdeadenylaseによるポリAテールの除去も含まれる。これらRNA分解の速度は,細胞内外からの様々な刺激に応答して変化する。例えば,免疫反応においてサイトカイン類やケモカイン類をコードするメッセンジャーRNA(mRNA)が安定化することが知られている1)。このようなmRNAの安定化(RNA分解の抑制)は,短時間でmRNA量を増量することに役立っており,刺激に応じた遺伝子発現量の制御において重要な役割を担っている。RNA分解の制御においては,分解速度を規定するRNA配列(シスエレメントと呼ぶ)とシスエレメントに結合するRNA結合タンパク質(トランスエレメントと呼ぶ)が中心的な役割を果たしている。インターロイキン2やtumor necrosis factorなどのサイトカイン類やケモカイン類をコードするmRNAの3'非翻訳領域にはAUUUA配列を特徴とする“AU rich element”と呼ばれるシスエレメントが存在し,このAU rich elementに様々なRNA結合タンパク質(AUBP;AU rich element binding protein)が結合して,該当mRNAの分解速度を制御している。トランスエレメントであるAUBPの中には,特定のヌクレアーゼと相互作用することを通じて該当mRNAにヌクレアーゼを導入し,mRNA分解を促進する。一方,これとは逆にヌクレアーゼがmRNAに結合することを阻害するAUBPも存在する。例えば,AUBPの一つであるHuRは,MK2によるリン酸化制御を受けて標的mRNAを安定化する。また,mRNA分解速度はマイクロRNAによる制御も受けている。このように高度に制御されるmRNA分解機構が破綻した場合,タンパク質の発現量の異常を引き起こして自己免疫疾患やがんなどの原因となることが知られている。
Copyright © 2015, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.