増大特集 生命動態システム科学
Ⅲ.合成生物学
4.オプトジェネティクス
(1)嗅覚情報処理を担う神経地図形成の分子基盤
竹内 春樹
1
Takeuchi Haruki
1
1福井大学医学部 高次脳機能領域
pp.516-517
発行日 2014年10月15日
Published Date 2014/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200067
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■マウス嗅覚系の神経回路
高等動物の脳は多数の神経細胞からなる精巧に組織された神経回路によって入力する情報の価値付けを行い,適切な行動判断を行う。五感を介して入力される感覚情報は,まず,脳内において“神経地図”と呼ばれる二次元の位置情報へと変換され,高次中枢へとその情報が伝達される。感覚情報処理の中核を担う“神経地図”の形成メカニズムは,神経科学における明らかにすべき重要な課題として考えらており,われわれはマウスの嗅覚系をモデルに研究を行っている。
外界に存在する匂い分子は,鼻腔奥の嗅上皮に存在する嗅覚受容体によって受容される。マウスの嗅覚系では嗅上皮には約1千万個の嗅神経細胞(嗅神経)が存在するが,それぞれはゲノム中に存在する約1,000種類の嗅覚受容体の中からたった1種類を選択的に発現する。同種の嗅覚受容体を発現した嗅神経の軸索は,発生の過程で大脳前方に位置する嗅球の特定の箇所へと投射し,糸球体構造を形成する。したがって嗅球上には嗅覚受容体の種類に対応した約1,000個の糸球体からなる神経地図が形成され,香水のような数多くの匂い分子を含む複雑な匂いは,約1,000個からなる糸球体を素子とする神経地図によって,嗅球表面で糸球体の発火パターンという二次元画像へと変換される(図A)1)。
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