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はじめに
生物は,外界に存在する化学物質を感知し,その構造を識別する機能を有する。このような生物の化学受容機能の最も原始的な形態は,バクテリアや原生動物の走化性にみられる。昆虫および脊椎動物においては,化学感覚器は,味覚器と嗅覚器に分化している。陸生の動物は,気体状の化学物質を嗅覚器で捕え,水に溶けている化学物質を味覚器で感知する。魚のような水生の動物の場合は,外界の水が嗅覚器に自由に出入りするので,嗅覚器も水に溶けている化学物質を感知する。アミノ酸は,われわれ人間には匂いのない物質であり,味覚器を刺激する物質として分類されているが,魚の場合は,アミノ酸は味覚器と嗅覚器の両者を刺激する。このような意味では,味覚と嗅覚の受容機構は,多くの共通点があると考えられている。
嗅覚のリセプターの性質を考える場合には,次の点を考慮する必要がある。本誌のこの特集号で取り上げられているリセプターの大部分は,結合する相手が生体物質である。嗅覚においても,フェロモンやアミノ酸のような例では,刺激物質は生体物質である。このような場合は,受容サイトの特異性が高く,嗅受容膜にはこれらの刺激物質と特異的に結合するリセプター分子が存在するものと思われる。一方,多くの人工物もまた嗅覚器を刺激する。われわれ人間を例にとれば,一定の蒸気圧を有するほとんどの物質に何らかの匂いを感ずる。匂いを有する物質の数からみれば圧倒的に人工物が多い。
Abstract
Certain species of olfactory stimuli such as pheromone and amino acids elicit responses only in the receptors of specific animals. Specific receptor molecules for these type of stimuli must exist in the olfactory receptor membrane. An attempt to isolate receptor molecules for amino acids is made with use of the olfactory epithelium of fishes.
On the other hand, general odorants elicit responses in various non-olfactory cells as well as olfactory cells. For example the odorants elicit impulses in the Jacobson's organ, the trigeminal nerve and the gustatory nerves.
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