Japanese
English
シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎
1.嗅覚
1.Sense of smell
三輪 高喜
1
Takaki Miwa
1
1金沢医科大学感覚機能病態学(耳鼻咽喉科学)
pp.61-66
発行日 2010年1月20日
Published Date 2010/1/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1411101537
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Ⅰ はじめに
ニオイ受容のメカニズムは,案外,最近まで知られておらず,その端緒となったのは,1970年代から80年代にかけての生理学研究の成果であった。パッチクランプ法の導入により,嗅細胞内にアデニル酸シクラーゼが存在し,嗅細胞のチャンネルがcAMP依存性に開くことから,嗅覚受容体がG蛋白質共役型受容体ファミリーであることが示唆された1~4)。続いて90年代の大きな発見は,PCR法を用いた分子生物学的研究によりもたらされた。1991年のRichard AxelとLinda Buckによる嗅覚受容体をコードする遺伝子クローニングの成功である5)。したがって,大半の耳鼻咽喉科医はニオイ受容のメカニズムについて,大学の授業で習っていないことになる。その後,ドラマチックにニオイ受容の仕組みが解明されるに至り,AxelとBuckの両名は2004年ノーベル医学生理学賞を受賞することとなった。一方,嗅覚障害の臨床に関しては,まだまだ遅れをとっているが,基礎的な研究成果により,一部の病態の理解も可能となっている。本稿では,ニオイ受容のメカニズムについて概説するとともに,嗅覚障害の病態について臨床的観点から述べる。
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