特集 細胞の分子構造と機能―核以外の細胞小器官
5.ペルオキシソーム
肝臓のペルオキシソーム分解
上野 隆
1
,
江崎 淳二
1
Takashi Ueno
1
,
Junji Ezaki
1
1順天堂大学 医学部 生化学第一講座
pp.460-463
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425101355
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ペルオキシソームは1950年代ベルギーの生化学者Christian de Duveによってリソソームとともに発見されたオルガネラである。真核細胞に普遍的に存在し,単膜によって囲まれ,大きさは直径が0.1-0.8μmの球形であることが多いが,細胞によっては亜鈴形なども認められる。ペルオキシソームタンパクはサイトゾルのポリリボソームで合成され,ペルオキシソームへ輸送される。ペルオキシソームという名称は,マーカー酵素としてよく知られるカタラーゼや尿酸オキシダーゼなどに代表されるように,有毒な過酸化物を分解し,また,基質を分子状酸素で酸化する酵素活性に富むことから与えられた。
生理的には脂肪酸や胆汁酸,コレステロール,プラスマローゲンなどの脂質代謝や,アミノ酸代謝で重要な働きを担う。なかでも教科書で真っ先に取り上げられていて周知されているのは極長鎖脂肪酸のβ酸化であろう。高脂肪食や高脂血症治療薬(脂質低下薬)を与えられた肝臓のペルオキシソームでは,C20-C22という炭素数の多い脂肪酸をβ酸化でC8程度の脂肪酸にまで分解する。ミトコンドリアのβ酸化と異なり,還元力を酸素と反応させてH2O2を生成するのでATP産生には寄与しない異化経路である。
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