Japanese
English
特集 ニューロンと脳
大脳辺縁系,前頭前野および側坐核と情動行動
The role of the limbic system,prefrontal cortex and nucleus accumbens in emotional behavior
小野 武年
1
,
田村 了以
1
Taketoshi Ono
1
,
Ryoi Tamura
1
1富山医科薬科大学医学部生理学第二講座
pp.50-59
発行日 2004年2月15日
Published Date 2004/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100670
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
- サイト内被引用 Cited by
ヒトをはじめ動物は,生得(本能)的または後天(経験や学習)的な欲求を満たしてくれる食物,水,異性の相手など快感や喜び(快情動)を感じるものには近づき手に入れようとし(接近行動:快情動行動),外敵や危険物など不快感や恐れ,怒りや悲しみを感じるものは排除または回避しようとする(攻撃または逃避行動:不快情動行動)。これら快・不快情動行動を起こすに至る脳内過程を快・不快情動と呼ぶ。ヒトや動物は,情動(生物学的価値評価と意味認知)によって,行為対象が自分にとって報酬なのか罰なのかをすばやく判断して,外界の状況に応じた臨機応変の行動を実践する。また,過去の体験や記憶は将来の類似した状況下でより有利な行動戦略を選ぶのに役立つ。これまでの研究により,大脳辺縁系,とくにその二大神経構造である扁桃体と海馬体がそれぞれ情動および記憶に,また,前頭前野は意欲の持続,推論,意思決定などに重要な役割を果たしている。さらに,これら扁桃体,海馬体,前頭前野などの脳領域からの情報が収束し,腹側被蓋野から密なドパミン作動性入力を受ける側坐核は,誘因動機づけや報酬予測などに役割を果たすと考えられている。
本稿ではこれら脳領域のうち,まず,大脳辺縁系(扁桃体と海馬体)および前頭前野の役割について,筆者らがこれまでサルを用いて行ってきたニューロンレベルの研究について述べる。ついで,腹側被蓋野-側坐核(中脳辺縁ドパミン)系の快情動行動における役割について概説し,最近筆者らが行っている,ドパミンD2またはD1受容体ノックアウトのマウス側坐核ニューロン報酬予測応答や行動などへの影響に関する最新知見を紹介する。
Copyright © 2004, THE ICHIRO KANEHARA FOUNDATION. All rights reserved.