Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
I.はじめに
前頭前野(prefrontal cortex)の実験心理学的研究は1935年のJacobsenをもって始まるとされるが,それを100年さかのぼってGallの頃より同部は知的行動の座とか(Gall 1835),意志や情動・人格の高次中枢とか,協動運動や感覚連合の高次中枢とする考えがあった。しかし破壊部位が大きくいずれも証拠不充分であった。Jacobsenに続く研究は彼が導入した遅延反応(delayed response;DR)というテストを中心に幾多の仮説を生みながら短期記憶能力と前頭前野の関係およびその前頭前野内の局在部位を追求する方向ですすめられてきた。一方1970年から久保田,二木によって始められた遅延交代反応(delayed alternation;DA)遂行中のサルからの単一ニューロンの記録により,短期記億の座とされる部位に電気生理学のメスが入れられた。これにより以後7年,前頭前野の機能に関する研究は深まってきたが,その広汎な領域の機能の全容をとらえるにはいまだほど遠いといってよい。日本語による前頭前野の総説はすでにいいものがいくつか出ているので,ここでは線維連絡と機能局在とについて簡単にふれ,これまでに破壊実験による研究から出された問題点,とくに前頭前野の背外側部位に関するものと単一ニューロンのアプローチによる結果を交互にながめながら本論をすすめたい。
Since Jacobsen's epoch-making studies on the prefrontal cortex (PFC) in 1935, the short-term memory hypothesis on PFC has been re-examined by using various delayed response tasks (delayed response; DR, delayed alternation; DA) in differ-ent species, producing alternative hypotheses for explaining a PFC syndrome. While a locus for DR was explored within PFC, several functional sectors were discovered.
Copyright © 1977, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.