特集 生命科学のNew Key Word
12.病気
連鎖不平衡マッピング
山田 和男
1
,
吉川 武男
1
Kazuo Yamada
1
,
Takeo Yoshikawa
1
1理化学研究所脳科学総合研究センター分子精神科学研究チーム
pp.548-549
発行日 2004年10月15日
Published Date 2004/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425100645
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連鎖不平衡とは
染色体は,組み換えを繰り返しながら祖先から子孫へと伝達されていく。ゲノム上の2点間の組み換えは,物理的距離・DNA構造などに依存する確率的現象であり,近接する2点間では組み換えが起こりにくく,2点間の距離の増大に従ってその間で組み換えが起こる確率は高くなる。ある程度以上離れた染色体上の2点間では,0から複数回の組み換えが起き,2点が同時に一つの配偶子にのる確率は1/2となる。従って,組み換え率(θ)は0<θ<0.5の範囲をとる。ゲノム上のある2点間の組み換え率が<0.5である場合,この2点間には連鎖があるという。
数世代からなる家系の中では,組み換えは10-30Mbp程度の間隔で起こると考えられるが,一般集団の中では,その集団が形成されてから十分若い時期には完全に連鎖していた領域が,世代を経るに従ってその間に発生した組み換えの結果連鎖が弱くなっていき,やがて連鎖のない平衡状態に達する。もし近接するゲノム領域間でまだ連鎖が残っているとすると,それは過渡的な連鎖不平衡にあるといえる。そして,祖先に生じた疾患感受性変異と近傍にある遺伝子多型とが連鎖不平衡にあるならば,その多型を検出することで疾患感受性変異の存在を推定することができると考えられ,これに基づいた解析手法を連鎖不平衡マッピングという。疾患群での対立遺伝子の伝達・保有の偏りを関連といい,連鎖不平衡マッピングではマーカーとなるDNA多型と未知の疾患感受性変異との関連を検出する。
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