連載 ホスピタリストとエキスパートで深読み! 診療を変える最新論文
第2回|BLINGⅢ試験
髙井 咲弥
1
,
榎本 貴一
2
,
片岡 惇
3
,
官澤 洋平
4
1飯塚病院 総合診療科
2練馬光が丘病院 薬剤室
3練馬光が丘病院 総合救急診療科 集中治療部門
4神戸大学医学部附属病院 総合内科
pp.628-634
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218804090120030628
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βラクタム系抗菌薬は,最小発育阻止濃度(MIC*1)を超える血中濃度をある一定以上の時間で維持することで効果を示す,「時間依存性抗菌薬」であることが知られている。時間依存性抗菌薬のPK/PD*2の指標には,薬物血中濃度が病原体のMICを上回っている時間の割合を示す,%time above MIC(TAM%)が使用される(図1)。
βラクタム系抗菌薬の持続投与や延長投与❶では,間欠投与と比べてTAM%が上昇することがこれまでの研究で示されており1),殺菌効果が最大となるTAM%を達成するための戦略として,βラクタム系抗菌薬の持続投与や延長投与が注目されている(図2)。しかし,これまでの無作為化比較試験(RCT)やメタ解析においては,死亡率などといった患者中心のアウトカムが持続投与によって改善するかに関して,一貫性のある結果は得られておらず2〜4),決定的なエビデンスには乏しいのが現状である。
そんななか,ICU入室患者におけるβラクタム系抗菌薬の持続投与と間欠投与を比較した,これまでで最大規模のRCTが発表された。今後の抗菌薬治療を変えるかもしれないその論文に関して,ホスピタリスト,エキスパートそれぞれの視点から深読みしていく。

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