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集中治療を受ける重症患者において,現病態に加えて新たな悪化を生じさせないため,合併症のリスク評価・予防は重要である。具体的には人工呼吸器関連肺炎(VAP*1),深部静脈血栓症(DVT*2)など複数あるが,ストレス関連粘膜障害stress-related mucosal damage(SRMD,通称:ストレス潰瘍)予防もその1つである。
1969年にストレス潰瘍という概念が提唱されて以来,内視鏡的に粘膜障害が高率に認められることが報告され,1998年のASHP*3ガイドライン1)が長らく標準的に参照されてきた。挿管人工呼吸器管理下の患者におけるストレス潰瘍予防stress ulcer prophylaxis(SUP)としてのプロトンポンプ阻害薬(PPI)の投与は,上部消化管出血を減少させるという報告は多くみられるものの,死亡リスクの改善はこれまで示されておらず2,3),ガイドラインでの推奨①も弱い推奨にとどまっていた。しかし2000年代以降は,全身管理の質向上に伴い,消化管出血の発生率やその予後が大きく変化してきた。これまでのエビデンスは古く,現在のICU患者での有益性やリスクは不確かであった。
こうした背景から,近年,SUPの有用性と安全性を現代のICU環境で再評価する大規模試験が相次いで実施されている。2024年にはSCCM*4/ASHPの新しいガイドラインも発表されており,最新知見の整理が重要である。
今回,集中治療を受ける重症患者において,PPI投与が上部消化管出血の抑制や生命予後の改善について有用かどうかを検証するため行われた本研究について,ホスピタリスト,エキスパートそれぞれの視点から迫っていく。

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