特集 その裏にある「虐待」問題
虐待の理解から援助へ―サイコエデュケーション的アプローチが有効である
岩井 圭司
1
1兵庫教育大学
pp.31-35
発行日 2003年9月15日
Published Date 2003/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689900721
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虐待を生き延びた人に気づくとき
筆者はとくに児竜青年期を専門としているわけではない,担当する一般精神外来を訪れる患者のほとんどが成人層である。そのような外来で,総合失調症など“ふつうの”病名―外傷後ストレス障害(PTSD)や解離性障害ではなく―をつけられてきた患者を治療しているなかで,時に「あれ?」と思うことがある。
たとえば,治療者が患者の生活史上のある時期にふれたとたんに,治療者に対する敵意と依存心の混じった不安定な情動が表出されるときである。それは,境界型人格障害にかなり特有とされるあの対人関係様式に近い。患者は“恨み”のニュアンスを帯びた敵意を唐突に治療者に向けるかと思うと,次にはうって変わって“赦し”を乞うかのような依存的な態度をみせる。当然,治療者は当惑する。
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