連載 トラウマインフォームドな精神保健医療福祉のパラダイムシフト・2
まず住まいから始めよう—トラウマインフォームドケアとしてのハウジングファースト
熊倉 陽介
1,2
1東京大学大学院医学系研究科精神保健学分野
2ことぶき共同診療所
pp.556-561
発行日 2020年11月15日
Published Date 2020/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200815
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悪夢:爆撃機に延々と銃撃される
晴れた空の彼方から複数の爆撃機が唐突に猛スピードで轟音と共に飛んできて、機関銃のようなもので銃撃されています。気付くと自分は窓の大きなマンションの一室にいるようなのですが、壁が破壊されて砕け散り、破片が地面にバラバラと落ちる音で鼓膜が破れそうです。わけがわからないままいきなり空から銃撃され始めたので、柱の影に倒れ込んで隠れました。すると通り過ぎていった爆撃機の連隊は空中で旋回して再びこちらにスピードを上げて向かいながら銃撃してきます。死に物狂いで匍匐前進して、逆方向の壁の影に隠れます。爆撃機はまた旋回して別の方向から執拗に銃撃してくるので、また別方向の柱の影に隠れないといけません。身体が固まって思うように動かず、なぜか匍匐前進しかできなくなっています。そもそもここがどこなのかがわからず、部屋の外に出てもどこに逃げたらいいのか全くわかりません。壁が砕けた粉塵のせいで目の前がよく見えず、喉がひりついて声も出ません。汗でシャツが身体に張り付いています。何も武器を持っておらず丸腰で、応戦する術もなく、ただただ匍匐前進で隠れ続けています。銃撃は終わる気配がありません。もはや建物全体が砕け散るか、すでにとっくに撃ち殺されて死んでいるほうが自然なのではないかとすら感じるほど長いこと攻撃され、いつ終わるともしれない恐怖の中で匍匐前進する気力・体力も尽きています。爆弾を落として木っ端微塵にしてくれれば1回ですむはずなのに、なぜ銃撃なのでしょうか。
やっと目が覚めました。悪い夢でした。
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