特別記事
—当事者研究と笑顔—医療観察法病棟で幻聴妄想を聞く
村上 靖彦
1
1大阪大学大学院人間科学研究科
pp.556-568
発行日 2019年11月15日
Published Date 2019/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200682
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1.対象者Pさんの語り
対象行為を感じさせない穏やかさ
Pさんは小柄で非常に物静かな人である。こちらの問いかけにも、ほとんど一言短く返すだけだ。私が今まで会話した誰よりも小声で、近づいて耳をそばだてないと聞こえない声でお話しされた。そこで、Pさんの横で心理士の方がPさんの言葉を速記してくれて、私が理解できるように補助してくれた。Pさんとのインタビューは断片的な語りになったので、普段行っている現象学的質的研究の書き方はできない。そのためいくつかの要点をまとめる形にしたい。
Pさんはインタビューのあいだ何度もほほえみを浮かべ、とても穏やかな印象を受けた。「対象行為」★1(他害)におよんだとは思えないほどの物腰の柔らかさであった。
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