書評
『幻聴妄想かるた 解説冊子+CD「市原悦子の読み札音声」+DVD「幻聴妄想かるたが生まれた場所」付』
大野 更紗
pp.360
発行日 2012年4月15日
Published Date 2012/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102178
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私は自己免疫疾患系の難病患者であるので、正直、精神障害をもつ人の苦しみや困ってることというのは経験則の範疇でしかない。代弁などできないと思う。私も「妄想」についてはなかなかいい線をいっている気がする。しかし重要なポイントである「幻聴」を聴いたことはまだない。惜しい。
精神障害を持つ人たちにとって、「幻聴」や「妄想」は、空気のようなものなのかもしれない。当たり前すぎて、言語化する必要性をあまり感じないのだと思う。「言葉にしてほしい」というのはむしろ、幻聴力も妄想力もイマイチ不足し、脳みそがすっかり固くなってしまった、凡庸な日本社会の側の願望なのかもしれない。近年、精神障害の領域を中心に「当事者研究」の試みは各地に広まっている。この「幻聴妄想カルタ」は、東京・世田谷区にある精神障害者の人たちのための作業所、「ハーモニー」の当事者研究から生まれた。フリーダムすぎるメンバーによって制作された、ワンダホーなカルタである。
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