特別記事
共同創造から共同妄想へ—VR/AR技術を活用した幻視・幻聴当事者研究の実践
畑田 裕二
1
1東京大学大学院 情報学環
pp.42-50
発行日 2025年1月15日
Published Date 2025/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134327610280010042
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本稿では、バーチャルリアリティ(VR)技術を用いて統合失調症当事者の持つ個別具体的な幻視・幻聴体験を工学的に「再現」し、その体験を周囲の他者と共有することを通じて対話の場をひらくという当事者研究の実践について紹介する。
VRは、視聴覚をはじめとするさまざまな感覚刺激を工学的に提示することで、人工的に現実感を作り出す技術である。近年では、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)が家電量販店で販売されるほどに社会展開が進んでいる。また『ポケモンGO』に代表されるような、もともとは存在しなかった感覚刺激を重ね合わせ、現実を部分的に拡張していくAR(Augmented Reality)技術もよく見かけるようになってきた。なお、本稿ではVRとARを、程度の差こそあれどちらも「現実」を編集する同類の技術であるとして、あまり区別せずに併記する。
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