連載 宮子あずさのサイキア=トリップ・41
記録と記憶
宮子 あずさ
1
1東京厚生年金病院
pp.110-111
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100278
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土壇場での〈逆上〉
緩和ケア病棟で最近、ちょっとした「事件」がありました。他院から転院してきたがん末期の女性がいよいよ亡くなるというときになって、家族がそれを受け入れられず、結局はICUで最後まで延命―蘇生のフルセットを行なうことになったのです。
きっかけは、患者さんが亡くなる前にほんの少し、意識がはっきりしたことでした。私も数多くの患者さんを見送るなかで、経験した場面です。くだり坂の患者さんが、いよいよ生命の火が消える前に、ちょっとだけよくなったように見える。ありきたりなたとえですが、線香花火の炎が落ちる前、ひときわ光り輝くのに似ています。
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