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骨髄で誕生したナイーブT細胞は,リンパ節のナビゲータシステムに誘導されてリンパ節のT細胞領域で抗原提示細胞から抗原提示を受け,細胞障害性T細胞と記憶T細胞とに分化し細胞障害性T細胞は感染細胞を求めて末梢組織に移行する.記憶T細胞はそのままリンパ節で抗原に出合うのを待ち続けるものと,積極的に細胞障害性T細胞とともにリンパ節を出て病原体の侵入を受けやすい部位に移行するものとが存在することが明らかになった.リンパ節で居座り抗原を待つものをセントラル記憶T細胞という.積極的にリンパ節を出て行くものをエフェクター記憶T細胞といい末梢の臓器,皮膚や粘膜に移行する.セントラル記憶T細胞はリンパ節に居座っているのでCCR7を発現している.一方,エフェクター記憶T細胞はCCR7を捨て末梢組織に移行し,抗原に出合うとただちに細胞障害性T細胞に分化し感染細胞を破壊する.
絶えず病原体に曝露される危険にあるのは体表面を覆う皮膚と体内の器官を覆う粘膜とである.消化管粘膜には“粘膜免疫装置”(gut-associated lymphoid tissue,GALT)がある.GALTにはリンパ節に相当するパイエル板(Peyer patch)など特殊なリンパ器官がある.リンパ節がケモカインと接着分子のリガンドとを発現して免疫細胞を誘導するナビゲーターシステムがあるように,皮膚と粘膜も同様なシステムで記憶T細胞を誘導していることがわかった.皮膚に誘導されるエフェクター記憶T細胞は接着分子CLA(cutaneous lymphocyte-associated antigen)およびα4β1インテグリンとケモカインレセプターCCR4とを発現している.粘膜に誘導されるエフェクター記憶T細胞は接着分子α4β7インテグリンとケモカインレセプターCCR5とを発現している(図1).二つのセントラル記憶T細胞が体表面と粘膜の免疫機構でどのような機能を発揮しているのか不明であるが,各々の免疫機構で特徴ある生体防衛機構を担当していることが想像される.
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