特集 医療者が楽になる「リスクマネジメント」
リスクマネジメントの「政治学」―報告書の裏にあるさまざまな感情
宮子 あずさ
1
1東京厚生年金病院
pp.18-21
発行日 2004年9月1日
Published Date 2004/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689100255
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
私が病棟管理者として事故報告書を書く理由
管理職になってこの3年間,私はたびたび事故報告書を書いています。その内容は主に自傷行為と離院。
たとえば以下のような事例について書きました(内容は大幅に改変しています)。
●ヒステリー性格で常に周囲を攻撃し,身体症状のアピールが続いている女性。朝,ナースが朝食後薬を配りに行った際,カミソリでリストカットした。傷は非常に浅く,出血はわずか。カミソリは外出した際,顔剃り用に買ったものだった。
●境界型人格障害の若い女性。自宅に外泊した際,ボーイフレンドと口論となり,衝動的に大量服薬。救急車での帰院になった。薬はずっと以前から,飲み忘れなどでため込んでいたものだった。
●痴呆のお年寄りが離院し,タクシーに乗ってしまった。行き先がわからず困った運転手さんが交番に着け,病院に連絡が入る。パトカーで無事帰院した。
●摂食障害の女性が無断で外出。近所のコンビニエンスストアで万引きした。本人は犯行を認め,警察経由で帰院。
こうした場面では,その場にかかわった看護師が当事者として報告書を書く部署も,多いかと思います。むしろそのほうがポピュラーかもしれない。それをあえて私が書いているのは,以下のような理由からです。
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.